“世界レベルのacademic surgeonを育てる”
複数の研究留学先を有し、県内外に多くの研修施設を抱え、心臓血管外科専門医として飛躍するための手術手技の修練はもちろんのこと、学会活動、臨床および研究論文の作成、海外留学等、質、量ともに高いレベルでの研鑽を積む機会を提供しています。当グループが輩出した優秀な心臓外科医が国内の多数の施設で活躍しています。次代の日本の心臓外科を背負い、国際的舞台で活躍するLeading Surgeon を育てたいと願っています。
筑波グループにおける心臓血管外科専門研修(後期研修)のコンセプト --その1--
不器用でも心臓外科医になれる
若者の外科志向が薄れる昨今、心臓血管外科に飛び込んでくる若手がさらに稀少なのは事実です。若者から見て、心臓外科医へのハードルが多少高く映るのは自然かもしれませんし、育てる側のわれわれも、誰もが心臓外科医になれるとは思っていません。心臓外科医になれるのは、『自らの命をかけて目の前の命を救おう』という、医学部を目指した頃の心の火を消さずに持ち続けている一握りの若者たちだけです。そう、逆に言えば、その志と基本的な礼節さえ備わっていれば、誰でも、男でも女でも、不器用でも、屈強でなくとも、心臓外科医にはなれるのです。むしろ、もともと器用で才能豊かな心臓外科医など、どこにもいないと思います。一人前への道は、確かに他の科より少し遠いかもしれません。その先も、命と対峙する修練の道にゴールはありませんし、苦難というハードルは確かに低くはないでしょう。でもその分、資質によるのではなく進化への意欲によって、生涯自らの成長を見続けることができます。心臓外科医として命を預けていただく喜びやありがたみは、いかなる苦難をも凌ぐものです。
筑波グループにおける心臓血管外科専門研修(後期研修)のコンセプト --その2--
求む、エースと四番!
こころざす限りはしかし、“エース”か“四番”を目指してほしいと思います。われわれ筑波大学心臓血管外科グループは、茨城県内はもとより、全国、世界の連携施設とのネットワークを駆使して、世界レベルの心臓血管外科医の育成・輩出を図っています。若手が術者になれず、丁稚奉公のような時間を長く過ごすのがかつて日本の心臓外科の“しきたり”でしたが、当グループはいち早くそれを脱し、学年に応じた適切な修練機会を提供して、専門医として必要なスキルをできるだけ早く習得できるようプログラムを組んでいます。筑波大学が協定を結んでいるベトナム・ホーチミン市のCho Ray病院には、日本の若手心臓外科医のためのトレーニングセンターを構築する計画で、既に数名の当科若手が現地での有意義な武者修行の機会を得ています。かわいい子にはどんどん旅をさせましょう。当グループのリソースや人脈を存分に活用して、堂々と“エース”を目指してください。
筑波グループにおける心臓血管外科専門研修(後期研修)のコンセプト --その3--
次世代の“academic surgeon”を育む
とはいえ、スキルだけの外科医では人の命は預かれません。プロフェッションたる外科医として、“結果責任”は甘んじて負うとしても、その“意図”や“行動”にまで責任を負うならば、深い倫理観、理論や学術的背景に裏打ちされた外科技術を究めなければなりません。現状に満足せず、常に自分に足りないものを求め、理想と現実とのギャップを埋めるための学問を生涯し続ける義務(ノブレス・オブリージュ)を外科医は負っています。良い経験も苦い経験も糧として、そこから導かれる知見を学会や論文上に発表することは、自分自身の思慮や見識を深めるのみならず、それを社会と共有し、あるいは警鐘を鳴らし、さらに次の世代を支えるacademic surgeonを育むことにつながって行きます。メスを握りたいだけの外科医なら、当グループには要りません。それは最も危険で持続性のない外科医だからです。世代を超えて人を育て、進化し続けるグループであるために、文武両道の“academic surgeons”の集団でありたいと思います。